8/7
20:45関空からパラオに向けて出発。この時間になるとあわただしく人が行き交う関空も、昼間の雑踏が嘘のように静かになっていた。夜の闇にJL3469便は飛び立った。低く空を覆っている雲を抜けると、満月を少し過ぎた月が雲の上にポッカリと浮かんでいた。今回のチャーター便は直接パラオのコロール空港まで一気に運んでくれるので便利だ。グァムで乗り継ぎがないことは大助かり、深夜の乗り継ぎはつらいものがある。深夜1時に到着、コロール空港に降り立つとそこは雨だった。雨期だから仕方がないが・・・やっぱりと先行きが心配になる。荷物を受け取り、税関を抜けるのに30分はかかったろうか、深夜ということもあり、現地空港のスタッフや税関員の仕事ぶりは至ってゆっくりしていた。ホテルに到着したのは2時半を回っていた。
8/8
7時起床、眠い目をこすりながら外を見るとやっぱり雨が降っていた。外に出ると肌寒く、気温も日本よりずっと低くい。まるで避暑地に来たみたいな印象を受ける。ここで早速ウインドブレーカーを着ることになるとは思わなかった。7:30ホテルを後にして、裏の港から高速ボートに乗り込む。ボートは波の上を飛ぶように本船パラオスポート号の停泊するジャーマンチャネルに向かう。波しぶきと吹き降りの雨が容赦なく乗船者に襲いかかってくる。とても景色を眺めるどころじゃない。ひたすら我慢の40分だった。パラオスポートに到着し、シャワーを浴びて着替えをしてやっと落ち着いた。ゲストを迎えると本船は移動を開始する。到着した場所はゲロン島、強い西風をさけるためには仕方がないか。
1本目のダイビングポイントはゲロンインサイドとなる。豪快なポイントの多いパラオの中ではもの足らなさを感じたが、ゲロンインサイドの白い砂地・・・この静けさもまたいいもんだ。
2本目はゲロンコーラルガーデン、パラオでは唯一珊瑚が生き残るポイントと聞いていたが、そこもやはり今は見る影もなく、白化した珊瑚の森が累々と続いていた。数年前のエルニーニョでほとんど全滅したということだった。それでもよく見ると、枝珊瑚の先端は青白く輝き、決して死滅したわけではないことを証明していた。これからまた長い時間をかけて、見事な珊瑚の森を創り上げていくのだろう。
3本目はゲロンアウトサイド、このポイントは東に広がる外洋に面しており、東のブルーコーナーとも呼ばれているらしいが、本家ブルーコーナーにはとうてい及ぶものではない。磯マグロやサワラが回遊してくることも多いと聞いたが、今日はその影もなかった。透明なブルーの海にユメイロやタカサゴの仲間が群れて泳ぐ姿は美しかった。このポイントで一番驚かされたのは大ジャコ貝だ。ゆうに1mを越える大きさがあった。どれくらい時間を重ねたらこの大きさになるんだろう。その身体は珊瑚に埋まり、岩の一部のようになっていた。
夜になると少し雲が切れて、一瞬星が見えた。しかしそれもつかの間、やがて肌にも感じないくらいの細い絹糸のような霧が降り始めた。その霧は船のライトに照らされて初めて確認できるほど細かった。デッキに立っていると、いつしかしっとりとした潤いが心地よく感じられた。その霧もやがて大粒の雨に変わり始める。今夜もまた雨・・・
8/9
6時前、東の空に陽が昇ってきた。朝日に照らされた雲がオレンジ色に光って、見事な朝焼けだった。6:30本日1本目のブリーフィング、ポイントはブルーコーナーと決まった。みんなからは拍手が起こる。本船は先日の泊地ゲロンからジャーマンチャネルに移動していた。船は天候と潮の関係からジャーマンチャネルを抜けることが出来ず、チャネル手前からポイントのブルーコーナーまではボートで行くことになる。外洋に出るとさすがに波は高く、大きなうねりにボートは木の葉のように揺れた。
朝一番のブルーコーナーは最高だった。潮の流れも適度にあり、中層でまずブラックフィンバラクーダの群に逢う。コーナーの棚に取り付くとドラマの幕が上がる。目の前にはカスミチョウチョウウオの乱舞、ギンガメアジの群も見える。後ろからは人なつっこいナポレオンが近寄ってきた。そのときガイドのタンクバンカーが響いた。ガイドの指さす方向を見ると、なんとマンタが登場したではないか。ダイバーたちがうっとりと見つめる中、マンタは悠然と羽ばたきやがて青い海に消えていった。ここブルーコーナーにマンタが現れることはきわめて珍しいそうだ。千載一遇のチャンスに恵まれたわけだ。その後マダラトビエイも現れるし、千両役者の次々の登場に舞台の盛り上がりは最高潮となった。
2本目はブルーホール。ここもブルーコーナーに次いで人気の高いポイントだ。この頃になると雲行きはいっそう怪しくなり、波もますます高くなっていた。大揺れのボートから逃れるように10:55エントリーする。ブルーホールは海上の大波が嘘のように静かだった。ブルーホールにゆっくりと身を沈めていくと・・・そこには静寂の世界が広がっていた。ブルーホールはいつ来ても幻想的で、差し込んでくる柔らかな光は穏やかに心を癒してくれる。
珍しいハゼの仲間ヘルフリッチが居るというので、更に42mまで降りてゆく。ライトに照らし出されたヘルフリッチは近づくとすぐに穴に入ってしまった。この深さになると青色以外のすべての色は消えて、ライトに照らされて初めて色が確認できる。ヘルフリッチの薄紫に彩られた身体はなまめかしかった。
3本目はニュードロップオフ。午後からの天候は更に悪く、外洋から押し寄せる波のうねりはいっそう大きくなっていた。エントリーしてすぐに棚に取り付く。棚には強い潮の流れが当たっていた。岩にカレントフックをかけて立ち上がると、びゅーびゅーと音がして、それはまるで崖の上で下から吹き上げてくる風に吹かれているようだった。透明度は抜群で、沖を見ると∞の透視が出来た。魚影は薄かったが、それはそれでよかった。ここにも例の人なつっこいナポレオンが現れた。ブルーコーナーで見たのと同じ個体に見えるけど、そこからやってきたのかな?エキジット前中層でブラックフィンバラクーダーの群に出会う。静かに近づき群の中にはいる。間近に見るブラックフィンは、長さが1m程あり迫力があった。輝く銀鱗と黒の縦縞が美しい。
4本目はジャーマンチャネル。エントリしてまもなくマンタが現れた。さすがマンタのジャーマンチャネルと言われるだけのことはある。大きな口を広げたマンタは、マンタステーションと呼ばれる岩の上を2回ほど旋回して飛び去っていった。その後も2枚のマンタの影を見る。大きな影は遠目にもすぐにマンタと分かる。真っ白なギンガメアジの群も見事だった。
朝一番のブルーコーナーのマンタ、そしてジャーマンチャネルのマンタと満足の1日だった。
8/10
本日の1本目もジャーマンチャネル。期待を胸にエントリーする。潮の関係でいつもとは逆コースをたどると、不思議なもので初めてのポイントのような印象を受けた。ガイドのジョーダンの目や勘は鋭く、めざとくマンタを発見する。指さす方向を見ると後ろからマンタが飛来してきた。すでにクリーニングを済ませた後の様子で、ダイバーたちが見守る上を悠然と通り過ぎていった。マンタのそのゆったりとした羽ばたきは優雅で、思わずため息が出てしまう。ゆるんだ口からはレギュレーターがはずれそうになって、思わずハッと我に返る自分がおかしかった。しばらくすると今度は前から大きなマンタが迫ってきた。透明度があまりよくないため、それは突然目の前に現れたといった感じだった。とっさにカメラを構えなおし、息を止めシャッターチャンスをねらう。もう少し引きつけてから・・・と思った瞬間、目前に迫ったマンタは突然身を翻して、それはすごいスピードで身体をひねり方向転換をしてしまった。驚きと、一瞬の出来事にカメラが追いつかず、最高のシャッターチャンスを逃してしまった・・・残念。マンタがあんな素速く動くとは思わなかった。マンタの大きなひれが強力に振り下ろされると、とてつもなく強力な推進力を生み出すという現場を目撃してしまった。
2本目は、ビッグドロップオフ。時間の経過とともに、今日も、海はしだいに荒れてきた。ジャーマンチャネルを抜けると、もうそこには大波が押し寄せていた。ボートが波のトップからボトムに叩きつけられる衝撃は相当なものだった。とても外洋には出られる状況ではない。幸いビッグドロップオフは島の東に位置しており、西風を受けることはない。それでも、返す波で海面は相当波立っていた。ビッグドロップオフは岸辺から10mのエントリーポイントで、眼下には青々とした深淵が何と600mも落ち込んでいた。まさにビッグドロップオフだ。垂直の壁を眺めながら一気に20m潜航していく。壁にはびっしりと緑の海草が茂り、限りなく青い海の色とのコントラストは見事だった。その壁の所々にハナゴンベや、スミレハナダイがハーレムを作り乱舞していた。そして沖の方に目を移すとウメイロの群、青い海にはウメイロの黄色がよく映える。途中の洞窟ではニチリンダテハゼも確認できた。限りなく青い海を泳ぐ亀の姿にはこの上ない優雅さを感じた。
午後からますます波が高くなり、パラオスポート号は再びゲロン島に移動し始める。当初の予定では本日の最終はブルーコーナーと聞いていたが、外洋に出ることが出来なければどうしようもない。ゲロンアウトサイドはすでに波が高く、ポイントまで行きはしたが、ピックアップが難しくなりそうだということで引き返して、本日3本目は結局ゲロンインサイドとなる。エントリーすると、一面にきれいな白砂が広がっている穏やかな印象のポイントだ。砂地には鮮やかな黄色のギンガハゼが顔をのぞかせて出迎えてくれる。しばらく進むと珊瑚の森(残念ながら白化)の上でホソフエダイの群に出会う。静かに近づき群の中にはいる。背中の四つ星が美しい魚だ。更に進んでいくと大きなウミウチワがそこにあった。2mはあると思われる大きさには存在感があった。波に揺れるように身体をくねらせる海シダはダンスをしているようだった。
そしていよいよ今回の最終は特別メニューでスモールフィッシュガーデンでのフリーダイビングとなる。水深が浅いため、折からの波で水底の堆積物等が巻き上げられ透明度はよくなかった。しかしスカシテンジクダイや青い目のイトヒキテンジクダイが無数に群れている様子は見事な眺めで、そこにはスモールワールドが広がっていた。ニシキテグリもこのポイントの人気者だ。おまえはどうしてそんなにカラフルな装いをしているの?と尋ねたくなる。マンジュウイシモチのおしゃれな装いは目立っていて、模様のおもしろさでニシキテグリと人気を二分する人気者だ。いずれも珊瑚の隙間の中に身を潜め、慎ましく暮らしていた。
かくして今回のパラオダイビングは終わってしまった。天気都合で十分満足とはいかなかったけど、マンタにもたくさん出逢えたし、やっぱりパラオはすごい。
|